第1章 失恋、そして
「そう・・・。ごめん。ごめんね、菊。私、真尋くんのことが気になってるみたい。」
さっきまでの威勢は完全になくなり、声も自然と小さくなる。正面にいる菊を見ることができず、目線が下がって机の上をさまよう。しかもなんだか泣きそうだ。
「うん。だと思った。というか、みずきは真尋くんのことを好きになると思ってた。」
さすが私の親友だ。菊には本当に全てお見通しだった。下がっていた目線を上に向け、ゆっくりと菊と目を合わせる。
「それで?あなたはどうしたいの。」
菊は優しく微笑んで私を見ている。私の言葉を待っている。
「わからない・・・。好きな人ができたのなんて何年ぶり・・・高校生のときに片思いしていた人以来だから・・・6年、とか・・・?それに・・・」
「それに、なに?」
「真尋くんは菊の彼氏の親友だし、菊も仲良いでしょ・・・?だから・・・私のせいで気まずくなっちゃうかもしれなくて・・・。それにね、菊も、菊の彼氏も、その親友の真尋くんともずっと仲良くしたいっていう気持ちもあって・・・、だから・・・」
本当にうじうじしていてかっこ悪い。自分から「言いたい!」って言っていたくせに、どうしてこうも歯切れが悪くなってしまうのだろう。お酒が足りなかったのだろうか。
「みずきが私と私の周りの人たちを大切にしたいって思ってくれてるの、すごく嬉しいよ。ありがとう。」
それまで私のかっこ悪い自白を静かに聞いてくれていた菊が口を開く。優しい声で、優しい言葉を私にかけてくれる。
「大丈夫。私は気まずく思わないよ。みずきのこと、応援したいって思ってる。でも・・・」
急に菊の声のトーンが下がった。表情にも影が差す。とても大きな不安感が私の鼓動を速くする。気になるけど、聞きたくない。
「真尋くん、ずっと元カノに未練があるみたいで、今でも連絡取り合ってるって」