第8章 御陵衛士
伊東の策略が新選組に露見するまで、そう長くはかからなかった。
近藤勇暗殺計画──。
伊東の立てた策略は巧妙で、冷酷だった。
近藤はその報告を受け、「けしからん!」と怒りを露わにした。
伊東を討つため、土方と共に暗殺計画を練ったのだ。
首謀者に選ばれたのは、原田と永倉、そして霧島の三名。
土方は淡々とした口調で、だが緊張感を漂わせながら作戦を説明する。
「作戦はこうだ。近藤と伊東で宴会を開く。酒をたっぷり飲ませ、伊東を帰路につかせる。油断したところを斬り、その遺体を小路に置く。それを見た御陵衛士を誘き出し、集まってきた者を一網打尽にする」
部屋に集められた三人は、思わず顔をしかめる。
霧島は拳を軽く握りしめ、胸の奥がざわつくのを感じた。
「……なんか卑怯じゃねぇか?御陵衛士には平助もいるのに」
原田が眉をひそめる。
「平助は逃がしてやれ。戦う必要はない」
土方は淡々と、しかし強い口調で告げる。
永倉は視線を落とし、声を抑えつつ問いかけた。
「……でもよ、土方さん。相手に気づかれたら、どうするんだ?一筋縄ではいかねぇ相手だろ」
胸の奥で、斎藤の無事や御陵衛士との戦いの行方を案じる気持ちがざわめく。
土方は肩をすくめ、ため息をつく。
「まぁ、計画が上手くいくかどうかは神のみぞ知る、ってところだな」
そして三人を見渡した後、
「心配するな。準備は万端だ。お前らが動けば、計画は成り立つ」
しかしその目にはわずかに険しさがあり、戦の厳しさをひしひしと伝えていた。
霧島は拳を握りしめ、唇を噛む。
(……私にできるのか……本当に……)
自分の中で不安が渦巻く。
三番隊をまとめ、斎藤の無事を信じ、任務を全うする──。
その思いだけが胸の奥で小さく、しかし確かに燃えていた。
その場に立ち尽くし、深呼吸をして覚悟を整える。
(……崩れたら、隊も崩れる。だから、私が……)
霧島の目は、既に遠くを見据えていた。
「実行は今夜だ。お前ら、油断するなよ」
緊張と責任に押し潰されそうになりながらも、土方の言葉に背筋が伸びた。