第2章 承認
「酔いは冷めたか?俺はそろそろ戻る。あんたは今日はもう休め、皆には話しておく」
「……ありがとうございます」
霧島は深く頭を下げた。
夜気がひんやりと頬を撫で、熱のこもった身体を冷ましていく。
「風呂や寝床は雪村に聞け。雪村はよく気が回る。困った事があれば、何でも話すといい」
「え……雪村さん、ですか?」
思いがけず出た名に、霧島の胸に疑問と戸惑いが広がる。
斎藤は横目に一瞥し、薄く目を細めた。
「――あんた、女子なのだろ」
「……っ!」
心臓が跳ね、霧島の息が止まった。
これまで懸命に隠してきたものを、あまりにもあっさり言い当てられ、言葉が出ない。
斎藤は責めもせず、ただ静かに佇んでいる。
その眼差しには、咎めも嘲りもなかった。
胸の奥が強く跳ねた。
見透かされた羞恥と、どこか安堵に似た感情が入り混じる。
「……なぜ、分かったのですか」
霧島はやっとの思いで声を絞り出す。
「剣を握る手の細さ。呼吸の浅さ。歩き方。……目を凝らせば隠し通せるものではない」
淡々と告げながら、斎藤は夜空を仰いだ。
その何気ない声音に、かえって霧島の胸は強く揺さぶられる。
「では……皆に……」
「心配するな」
斎藤は短く遮る。
「誰にも言わぬ。だが、いずれ気づかれることも覚悟しておけ。
副長や総司は特に鋭い」
「……っ」
霧島は息を呑み、無意識に拳を握り締める。
「お前が女であることは、剣を振るう上での障りにはならん。……ただ、男所帯の暮らしとなれば、雪村の方が何かと気安いだろう」
背を翻す斎藤に、霧島は深く頭を垂れた。
「……ありがとうございます」
震える声には、素直な感謝がにじんでいた。
斎藤は振り返らず歩き出す。
「礼を言うのはまだ早い。誠を示すのは、これからだ」
夜の静けさにその声が溶けていく。