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三番隊の剣士【薄桜鬼】

第11章 微光


女だと知られたあの日からも、何も変わらない日々が続いていた。
誰も態度を変えることはなく、霧島もまた、いつも通りの顔で鍛錬に励んでいた。

中庭では、朝の風が木々を鳴らしている。
竹林の隙間から差す光が、白い息を淡く照らしていた。
木刀を握る手に力を込め、霧島は黙々と素振りを繰り返す。

そのとき、背後から軽やかな声がかかった。

「霧島君」

振り向くと、沖田がいつもの柔らかな笑みを浮かべて立っていた。
薄手の羽織の裾を揺らし、わずかに頬が青白い。

「沖田さん。おはようございます」

「おはよう。朝から稽古なんて、相変わらず真面目だね」

「体を動かしてないと落ち着かなくて」

霧島が笑うと、沖田はふっと目を細めた。

「ねぇ、ちょっと付き合ってくれない?」

「付き合う……って?」

「買い出し。屯所の茶葉が切れかけてるんだ。ね、いいでしょ?」

どこか軽やかな調子に、霧島は小さく笑ってうなずいた。

「もちろん。私でよければ」

二人は連れ立って町へと出た。通りはまだ薄曇りの中にあった。
朝霧がゆるやかに流れ、人々が交差する。

「やっぱり、こうして外に出ると気分がいいね」

沖田が呟く。

「本当ですね。最近は色々とありましたから…。屯所の中だと、少し空気が重い気がして」

「はは、それは多分土方さんのせいだよ」

霧島が思わず吹き出すと、沖田も釣られて笑った。
その笑みは穏やかで、どこか少年のような無邪気さがあった。

道の両脇では、枯れた木々が静かに揺れている。
人々のざわめきの中を歩きながら、霧島はふと問いかけた。

「……沖田さんは、どうして新選組に?」

その言葉に、沖田は少し驚いたように目を瞬かせた。

「初めてそんなこと聞かれたな」

柔らかく笑うと、少しだけ目を伏せる。
その横顔は、どこか遠くを見つめているようだった。

「僕は、ただ――近藤さんのそばに居たかった。それだけかな」

沖田の声は、懐かしい夢を語るように穏やかだった。

「僕は幼い頃に両親を亡くして、近藤さんの試衛館道場に預けられたんだ」

沖田は、ぽつりとぽつりと過去を話し出す。

「兄弟子達にね、よく虐められて殴られてばかりだったんだ。だけど初めて兄弟子に試合で勝った時、近藤さんが泣いて喜んでくれて……」

彼は遠くの空を見上げた。
淡い冬の光がその頬を照らす。
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