第10章 襲撃
「俺も気づいてはいたんだがな。無理に口を割らせてすまなかった」
土方が低く呟いた。
いつもの冷徹な声音の中に、わずかに柔らかな色が混じっている。
謝罪めいた言葉を土方から聞くなど、霧島にとっては想像すらしなかったことだった。
「俺も」
原田が軽く肩を竦めて同調する。
その声音は飄々としていたが、瞳は真剣だった。
「ただ、お前に余計な事言って、逆に追い詰めちまうんじゃねえかって思ってな」
霧島は二人の言葉に小さく目を伏せた。
胸の奥に絡みついていた黒い鎖が、少しずつほどけていくような感覚がある。
「……謝られる事はありません」
静かに告げる。
「私が皆さんに隠し事をしていた。それは事実ですから」
「なに、今さら水臭ぇこと言うなよ」
原田がにかっと笑い、霧島の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「結果的に新選組に華が増えたってことで、めでたしめでたしだろ」
「ふふ……ありがとうございます」
霧島は思わず小さく笑みを零す。
永倉がすかさず声を張った。
「よっしゃ! 二条城の警護も無事に終わったことだし、ここは景気づけに酒でも――」
「今後は警戒を怠るなと言っただろう」
土方の冷ややかな声が土間に落ち、場の空気が一瞬で凍りついた。
「ひ、ひぃっ……!!」
永倉は両手を挙げ、背を丸めて縮こまる。
「い、いやぁ、土方さんはほんっとに怖えなあ!冗談の一つも通じやしねぇ!」
「冗談を言う場じゃねぇからな」
土方の冷ややかな声が土間を圧する。
「お、俺だって場を和ませようと――」
永倉が言いかけたところに、原田が肩を叩いてにやにや笑った。
「まぁまぁ、新八。お前が一番騒がしいから、十分華はあるぞ」
「うるせぇ!」
永倉が真っ赤になって怒鳴り、また場が笑いに包まれる。
霧島は小さく笑みを漏らし、ようやく胸の奥に温かなものが芽生えるのを感じていた。