第1章 揺れる心と優しい手当て1
「違うんだ、青さん! 青さんが嫌とか、そういうんじゃなくて……」
俺は、あの時感じた正直な気持ちを、どうにかして伝えたいと思った。でも、なんて言えばいい? 「怪我を手当してくれてる青さんを見て、ムラムラしちゃいました」なんて、言えるわけがない。
顔が熱くなるのを感じながら、俺は必死で言葉を探した。
「あの、なんていうか……青さんが、あまりにも優しく手当してくれるから、俺、なんか、変な感じになっちまって……その、自分を押さえられなくなりそうで、だから、逃げたんだ」
我ながらめちゃくちゃな説明だったが、青さんは目を丸くして、それからゆっくりと頬を染めていく。
「へ、変な感じって……もしかして、虎杖くん、その……」
青さんの視線が、俺の顔から、俺の体へとゆっくりと下りていく。その視線が、俺の心臓をドクドクと早くさせた。
「うん……青さんが、その……あまりにも、綺麗で、優しくて、俺、青さんのこと……」
俺は意を決して、真っ直ぐに青さんの目を見つめた。
「好きだ! 青さんのことが、好きだ!」
俺の告白に、青さんはみるみるうちに顔を真っ赤にした。そして、下を向いて、モジモジと足元を見つめる。
「えっと、その……私も、虎杖くんのこと、嫌いじゃない、よ……」
蚊の鳴くような声だったが、俺の耳にははっきりと聞こえた。嫌いじゃない。その言葉に、俺の心は一気に軽くなった。
「じゃあ、俺と、その、お付き合いしてくれますか?」
俺がもう一歩踏み込むと、青さんは顔を上げて、潤んだ瞳で俺を見つめた。
「はい……喜んで」
青さんの返事に、俺は思わず飛び上がって喜んだ。
誤解は解けて、俺たちの間には、新しい、甘い空気が流れ始めていた。怪我をして、こんなラッキーなことがあるなんて、呪霊にも感謝しなくちゃな。
終わり