第13章 💜永倉新八ルート
『寺町デート編』
「……ほら、足元気をつけて。そっち、ちょっと段差あるから」
境内の石畳を歩きながら、新八さんは当たり前のように手を差し出してくれた。
その指に触れるだけで、胸がきゅんと高鳴る。
「今日は、誘ってくれてありがとうございます」
「え、なになに?急にかしこまって。可愛いなあ」
肩をすくめて笑う彼の横顔に、つい見とれてしまったのを見透かされたのか──
「……なあ、ももかちゃん。そんな顔、他の男の前で絶対するなよ?」
低く囁かれて、思わず顔が熱くなる。
「しません!……するつもり、ないです」
「ふふ、冗談だってば。……でも、ありがとう」
そう言って、新八さんは歩みを止め、回廊の影にそっとわたしを引き寄せた。
「ねえ、ちょっとだけ……こっち向いて?」
ゆっくりと覗きこまれるように顔を上げると、彼の瞳がまっすぐに揺れていた。
「ほんのちょっと、だけな」
唇が重なる。優しく、でも逃がさないように。
ドキドキしながら薄く目を開くと、視線が合ったような気がして、さらに深くなった。
「んんっ……」
やがてふっと離れて、彼はいたずらっぽく笑った。
「……俺、ほんとはちょっとだけのつもり、なかったかも」
「も、もう……!」
「え? ''もう"って、もっとって意味?」
新八さんはくすくす笑いながら、赤くなったわたしの頬をやさしく撫でた。
「また来ような。……今度はもっと長く、ふたりきりで」
そんな言葉と、手のひらの温もりが、胸の奥まで響いた。