第12章 💚藤堂平助ルート
『初めての夜編』*
夕方、屯所に戻ってきた平助くんが、玄関先でわたしに駆け寄ってくる。
額に薄く汗をにじませた顔で、笑顔全開。
「お茶淹れてあげる!待ってて!」
元気で明るくて、誰よりも隊の空気を和ませてくれる平助くん。
でも最近、ときどき見せる横顔が、大人びて見えることがあった。
そんな気配を感じたまま、お茶を受け取って縁側で一緒に並んで座る。
「ねえ、ももかちゃん」
「ん?」
「……今夜、俺の部屋に来てくれない?」
突然の誘いに心臓が跳ねる。
「え、えっと……その……」
「話したいことがあるんだ。……ちゃんと、男として」
彼の目が、いつもみたいなふわっとした笑顔じゃなくて。
まっすぐで、逃げ場のないくらい真剣だった。
——夜。
ふたりきりの平助くんの部屋。障子を閉めると、外の喧噪がふっと遠ざかる。
「ごめんね、急に呼んだりして。でも、ちゃんと伝えたかったんだ」
「……うん」
平助くんは正座して向き合うと、少しだけ目を伏せて、それからこう言った。
「俺ね、ずっと思ってたんだ。ももかちゃんに''弟みたい''って思われてたらどうしようって」
「そんなこと、思ってないよ」
「ほんとに?」
「ほんと。だって……平助くんは、わたしの中でちゃんと、''特別''だから」
その言葉に、彼の顔が一瞬だけ赤く染まって、でもすぐに真剣な顔に戻る。
「……なら今夜は……弟じゃなくて、''男''として抱きしめさせて」