第59章 『薬湯×興奮』藤堂平助編**
日が落ちて、屯所の灯りがぽつぽつと灯り始めた。
湯気の匂いと共に、静かな夜がゆっくりと広がっていく。
「平助くん、今日も鍛錬お疲れ様!薬湯、ちゃんと入ってね?」
「ありがとう!あれって、ももかちゃんが用意してくれたんでしょ?」
「うん。番頭さんに頼まれて……ちょっと葉っぱ、いろいろ入れすぎちゃったかもだけど……」
「へぇ、そんなに?じゃあ、いつもより効くかもな!」
そう言って、笑顔でお風呂場へ向かった平助くん。
――それからしばらくして。
わたしは冷たい水が入った湯呑みを持って、平助くんの部屋を訪れていた。
「平助くん、開けるね」
襖を開けてすぐ目に飛び込んできたのは、畳に座り込む彼の姿。
「……平助くん?」
「っ……ももか、ちゃん……」
(あれ?なんか顔……赤い?)
「どうかしたの?」
膝をついて覗き込むと、平助くんの頬は紅潮していて、首までじんわりと汗ばんでいるようだった。
「なんか……体が変、なんだよ……」
「え!?大丈……」
額に伸ばしかけた手を、慌てたように制される。
「ま、待って!」
「平助くん?」
「……今、本当にちょっと、駄目」
平助くんの目は潤んでいて、浅い呼吸にあわせて肩が小さく上下している。
「? ? 一体どうし…………、」
ふと視線を落とした瞬間、"あるもの"が目に入ってしまい、何も言えなくなった。
「……〜〜〜っ」
平助くんはわたしが"気づいてしまったこと"を察したようで、口元を覆って俯いてしまった。
そこでふと、ひとつの考えが頭をよぎる。
「もしかして……さっきの薬湯……調合がよくなかったのかも……」