第56章 羽織る温もり、奪われた光 ※
ジーニストの腕の中で、の震えはまだ止まらなかった。
涙は少し落ち着いたはずなのに、胸の奥は、まだ波打っている。
は、ジーニストの服をぎゅっと掴んだ。
離れたくない、というより、離れたら崩れてしまいそうだった。
ジーニストはそれを振りほどかない。
ただ静かに、の背に手を置いた。
落ち着いた声で言う。
ジ「……人は、辛い時ほど誰かの温もりを求める」
少しだけ距離を取り、を見る。
逃げ場を作るように。
ジ「今のが求めているのが、私でなくても構わない」
の瞳が揺れる。
ジ「だが」
ジーニストは静かに続ける。
シ「今、ここにいるのは私だ」
その言葉と同時に、もう一度唇が触れた。
さっきより、長い。
逃げ場を与えないキス。
「んん…っ」
けれど強引ではない。
包み込むような、深い口づけ。
離れたとき、の呼吸は少し乱れていた。
ジーニストは低く言う。
ジ「……今夜だけでも」
夜風が髪を揺らす。
ジ「私を羽織るかい」
の思考は、そこで止まった。
何も考えたくなかった。
オールフォーワンのこと、血のこと、この世界のこと。
雄英のこと、置いてきた人たちのことも。
「……考えたくない」
かすれた声だった。
ジーニストの服を、ぎゅっと掴む。
「何も……」
息が震える。
「何も考えたくない……」
視線を落としたまま、続ける。
「…考えられないようにして…………」
その言葉は、ほとんど懇願だった。
沈黙が落ちる。
ジーニストは一瞬だけ目を細め、静かに息を吐いた。
そして、の頬に手を添えた。