第56章 羽織る温もり、奪われた光 ※
夜明け前、まだ空が色を持たない時間。
は、目を覚ますたびに、思い出してはいけない人を思い出してしまう。
声、背中、静かな優しさ、温もり。
(……なんで)
そのたびに、は意識的に、ホークスの方へ身を寄せた。
「……啓悟」
名前を呼ぶ。
それだけで、胸が少し楽になるから。
ホークスは、気づいている。
この縋り方が、「愛」だけじゃないことも。
「逃げ」だってことも。
でも、腕を離せない。
ホ「ん、…」
を引き寄せる。
拒まない。
疑問も、投げない。
ホ「俺は、ここにおる」
それだけを、何度も言う。
は、ホークスの服を掴む。
強く。
離れないように。
「……ごめんね」
ホ「は何も謝ることないとよ」
ホークスは、額にキスを落とす。
ホ「やけん、謝らんで。縋ってくれて、嬉しか」
それが、どれだけ歪んだ喜びでも。
ホ「今、が一番近くにおってくれるなら、それでいい」
「ありがとう…啓悟」
ホ「ん、大好きやけん」
愛の囁きとともに、優しくキスがまた降ってきた。
の心が、少しずつ、元居た場所から遠ざかっていく。
薄れていくというより、上から、ホークスの温度で塗り潰されていく。
かつて、相澤たちがホークスの温度を塗りつぶしていたように。