第55章 告げられる想い、壊れていく心 ※
そして――緑谷。
何度、呼んでも。
何度、触れても。
目は開かない。
の視界が、暗くなる。
先に、エンデヴァーに声をかけようとしたその瞬間。
の膝が折れた。
――限界だった。
倒れ込む身体を、誰かが支えたかどうかもわからない。
ジーニスト、相澤、爆豪、轟、飯田が、一斉にの名を叫ぶ。
だが、の目は固く閉じられたまま。
返事はない。
暫くして、ようやく救急隊が到着した。
戦場は、もう音を失っていた。
呻き声も、怒号も、何もない。
ヒーローたちは次々と担架に乗せられ、全員がセントラル病院へと運ばれていく。
――国で一番の最先端医療を誇る病院。
それでも、“全員完治”には程遠い。
は、到着と同時に処置室へ直行だった。
衣服を切られ、全身にチューブと管が繋がれていく。
点滴、人工呼吸器、心電図。
血圧は安定しない。
脈は細く、危うい。
医師の声が、重なる。
「臓器が限界です」
「生命活動、いつ止まってもおかしくない」
“治癒の個性を持つヒーロー”ではない。
今、そこにいるのは壊れかけた1人の人間だった。
ガラス越しに、その姿を見た爆豪が、歯を食いしばる。
爆「……人ばっか治して……」
声が震えた。
爆「……もっと……自分、大切にしろや……バカがよ……」
目に溜まった涙が、零れそうになる。
相澤も、轟も、言葉を失っていた。
喉が、詰まる。
相澤は特にが、今回どれほどの“地獄”を通ってきたかを知っている。
の血が使われていたこと。
どんな想いで戦場に立ち続けていたか。
守れなかった、止められなかった。
その事実が胸を抉る。
轟も、黙って拳を握る。
その後、ホークスもセントラル病院へ運ばれてきた。
同じ夜。
死柄木の中のオールフォーワンは、逃げたその足でタルタロスを襲撃する。
収監されていた脱獄者は、全員解放。
――世界は、さらに悪夢へと落ちていった。