第54章 暴かれる真実、踏み潰される祈り
それでも、死柄木はその視線を、確かに“見た”。
死「……」
低く、囁く。
死「一緒に行こうか」
返事はない。
それでも構わないとでも言うように、死柄木は小さく笑った。
そして、の乾いた唇に、触れるだけのキスを落とす。
キスと呼ぶには、あまりにも静かで、あまりにも一方的な接触。
だが、それで十分だった。
死柄木は、を抱き上げる。
そして。
――――バキ。
五指全てを床に触れた。
そこから一気に、崩壊が伝播していく。
壁が、柱が、天井が、音を立てて消えていく。
死柄木は、腕の中のを、確実に守るように抱えたまま。
死柄木の一帯だけが、不自然なほど、保たれている。
病院内にいたヒーローたちは、必死に逃げた。
マイクは、殻木を引きずるように。
そこへグラントリノが飛び込み助ける。
相澤は、必死にを探す。
相「は!? はどこだ!!」
叫びは、崩壊音に飲み込まれながらリューキュウに掴まれその場を離れた。
脳無に足を捕まれたが、クラストの個性が最後まで道を作る。
その直後、クラストは崩壊し、消えた。
リューキュウが、空へ舞い上がる。
市民も、後衛の雄英生徒たちも、必死に走る。
振り返った時、病院があったはずの場所は、巨大な崖になっていた。
地面すら、存在しない。
一方。
死柄木は、崩壊の中心に残った。
を、そっと地面に寝かせる。
前髪が、目にかかっていた。
死柄木は、指先でほんのわずかに、それを避けた。
そしてその場の機械の中にあった、かつてオーバーホールが作った消失弾の複製をポケットに収めた。