第53章 特別な日、愛される幸せ
残されたのは、2人。
静かな夜道。
冬の冷たい空気が流れる。
しばらく歩いていると、ふっと隣から小さな笑い声が聞こえた。
「……?」
相「いや」
相澤は前を向いたまま、小さく笑う。
相「頬、緩みっぱなしだ」
「えっ?」
慌てて自分の頬へ手を当てる。
相「嬉しさ、全然隠せてない」
「っ……」
恥ずかしくなって俯いた。
相澤はそんな姿を見て、また少しだけ笑う。
相「今日は主役だったからな。他にはもう…ないか?」
「え?」
相「欲しいものでも、やってほしいことでも。例えば、あの仕事やってほしいとか…」
「ふふ、ないですよ。そんなことしたらまた消太さん残業するでしょう?」
相「まぁ…そうだな」
は少し考える。
欲しいもの。
してほしいこと。
頭の中に色々浮かんでは消えていく。
そして足が止まった。
少し照れくさそうに笑う。
「してほしいこと……ありました」
相「なんだ」
「いつもみたいに……」
少しだけ俯いて。
「頭、撫でてください」
最後は消えそうなくらい小さな声だった。
相澤は固まる。
まるで不意打ちを受けたようだった。
「…や、やっぱり今のなしで!」
恥ずかしさに耐えきれず歩き出そうとした瞬間。
腕を掴まれた。
相「……いいのか」
「え?」
相「そんなので」
は少し照れながら笑う。
「褒めてもらえた気持ちになって…また頑張れるから」
その一言に、相澤は静かに息を呑んだ。
かわいい。
あまりにも。
こんなお願いをされたことなんて、一度もない。
ゆっくりと手を伸ばす。
ぽん。
優しく頭へ手を乗せる。
いつものように。
優しく。
何度も。
ゆっくり撫でる。
は安心したように目を閉じた。