第52章 奪われた夜、青い炎 ※
校舎へ向かう途中、夜風が渡り廊下を抜ける。
が一人で歩いていると、影から、聞き慣れた声がした。
轟「……?」
は足を止める。
「……焦凍?」
振り返った先に立っていたのは、幼い頃から知っている顔だった。
白と赤の髪。
そして――静かな青い瞳。
その“青”を見た瞬間、胸の奥が、わずかに軋む。
(……青……)
さっきまで、別の“青”を見ていたから。
炎の色を宿した、冷たい目。
同じ色なのに、まるで違う温度。
轟は、の顔をじっと見る。
轟「……ホークスと一緒にいたって、聞いた」
責める調子じゃない。
ただの事実確認。
は、一瞬だけ視線を伏せてから答える。
「……大事な話をしてたの。仕事の延長、みたいな」
嘘じゃない。
でも、全部でもない。
轟はそれ以上突っ込まなかった。
その代わり、の表情を、じっと見つめる。
轟「……」
そして、一歩近づく。
低くて、落ち着いた声。
轟「……無理、してるだろ」
そのまま、腕を伸ばした。
を、そっと抱きしめる。
強すぎない。
でも、逃げ場を失わせない確かな力。
「……っ」
一瞬、息が詰まる。
――優しい。
荼毘の触れ方も、確かに優しかった。
壊れ物みたいに扱われた。
でもこれは、違う。
轟の腕は、“支える”ための強さだった。
の額が、自然と轟の胸に触れる。
轟「……大丈夫だ」
低く、はっきり。
轟「は、一人じゃない」
その言葉に、胸の奥が、じわっと熱くなる。
「……ありがとう、焦凍」
短い沈黙。
轟は、少しだけ腕を緩めて、の顔を見る。
轟「……送る」
は、頷いた。
「ありがとう」