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【ヒロアカ】愛と癒しの代償【R18】

第52章 奪われた夜、青い炎 ※


夜道に出た瞬間、風を切る音がした。

次の瞬間、羽根が舞う。

ホ「さん!」

聞き慣れた声。
けれど、そこに感情は乗せられていない。

完全に、仕事の声。

ホ「今までどこに……!探しましたよ!」

近づいてくる。
でも、触れない。

視線だけが、全身をなぞる。

乱れていない服。
歩き方。
目の色。

ホ(……生きてる)

それだけで、喉が詰まりそうになる。

「ホークス……さん……」

名前を呼ぶだけ。
それ以上、言えない。

ホ「大丈夫ですか?怪我は……何か、されましたか?」

聞いている誰かのための言葉。
連合の、解放軍の耳のための、確認。

でも内側では、抱きしめたい。
確かめたい。
上書きしたい。

それなのに。

ホ(……綺麗すぎるだろ……)

壊されていない。
乱されていない。

それが、逆に胸を抉った。

ホ「……守れなくて、すみません」

それは、ヒーローとしての言葉。
任務中の、形式的な謝罪。

けれど声の奥に、ほんの一瞬だけ、どうしようもない後悔が滲んだ。

は、少しだけ目を伏せてから、首を振る。

「いえ……怪我とか、してないので……大丈夫ですよ」

淡々とした声。
感情を落とした、無事の報告。

それが、あまりにも綺麗すぎた。

ホークスの喉が、ひくりと鳴る。

ホ「…そうですか。良かった…」

笑顔を貼り付ける。
“問題なし”の報告としては、満点。

でも。

ホ(……違うだろ……)

怪我がないから、大丈夫?
心が削られてない保証なんて、どこにもないのに。

ホークスは一歩距離を保ったまま、手を差し出す。

ホ「とりあえず……雄英に送ります」

触れない。
踏み込まない。

は一瞬だけ、その手を見てから、静かに頷いた。

何も言わない。
言えない。

聞かれているから。
そして、言ったら、全部壊れてしまいそうだから。

ホークスはを抱え上げる。

必要最低限の動作。
仕事としての距離。

それなのに、あまりにも近くて、苦しい。

壊されると思っていた。

けれど現実は、“丁寧に、何事もなかったように返された”。

その事実が、ホークスの胸を静かに引き裂いた。
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