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【ヒロアカ】愛と癒しの代償【R18】

第52章 奪われた夜、青い炎 ※


夜は、もう深い。

軋む床の音だけが残る空き家の中で、は静かに眠っていた。
呼吸は規則正しく、睫毛も微動だにしない。

荼毘はしばらく、その様子を見下ろしていた。

触れれば起きてしまいそうで、触れなければ、このまま消えてしまいそうで。

荼「……」

小さく息を吐き、しゃがみ込む。

乱暴に扱うつもりは、最初からなかった。
壊すために連れてきたわけでもない。

それでも、欲しかった。

欲しくて、手放せなくて、あの日の“続き”を、どうしても終わらせたくなかった。

濡らした布で、の体を丁寧に拭く。
指先が触れるたび、無意識に力を抜いてしまう。

荼(……甘ぇな)

自嘲するように、口の端が歪む。

服を整え、乱れた髪を戻し、最後に、額に触れそうになって、やめた。

荼(ここにいたら……また、欲しくなる)

それだけは、駄目だった。

返すと決めた。
だから、ここで終わりだ。

荼毘は立ち上がり、背を向ける。
振り返らず、何も言わず、ただ静かに、その場を去った。

_________

どれくらい眠っていたのか、分からない。
は、ゆっくりと意識を浮上させた。

知らない天井。
古い家の匂い。

でも、身体が妙に軽い。

起き上がろうとして気づく。
服は整えられていて、肌も、きれいだった。

「……?」

乱暴に扱われた形跡は、ない。
痛みも、傷も。

ただ、残っているのは触れられた“記憶”だけ。

(……優しかった……)

それが、一番混乱させる。

ホークスの触れ方。
相澤の、大きくて安心する存在。
爆豪の、真っ直ぐで熱い想い、眼差しと手。
轟の、距離を守る優しさ。

それと、同じだった。

(……なんで……)

荼毘は、敵だ。
怖い存在のはずなのに。

それなのに。

胸の奥が、ざわつく。

ひとりで、帰らなきゃ。
そう思って、立ち上がる。
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