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【ヒロアカ】愛と癒しの代償【R18】

第52章 奪われた夜、青い炎 ※


高層ビルの風が頬を切る。
ホークスは横目でちらりとを見た。

ホ「この前の本、読んでくれました?」

言い方は軽い。
でも瞳の奥は…必死。

「……はい。全部」

その短い返事に込められた意味を、ホークスは理解していた。

――“あなたの言葉も暗号も全部わかってる。でも私は来た。”

ホークスの指が、ほんの少しだけ空を掴むように震える。

ホ「……そっか。いや、読んでくれて……嬉しいっすよ」

嬉しい。
けれど、“嬉しい”がこんなに苦しいと感じたのは初めてだった。

ホークスは屋上の縁に立ち、わざと風を感じるように肩をすくめた。

ホ「うわ、寒っ。ここ、風強いな〜」

寒さなんかじゃない。
胸の奥に押し寄せる冷たい恐怖のせいだと、にはわかっていた。

ホークスの笑顔が、どこか軋んで見えるほどに。

はそっと歩み寄り、小さく息を吸う。

「ホークスさん。私も……おすすめの本、持ってきたんです」

差し出された本。
ホークスの瞳がわずかに揺れる。

「忙しいかなと思って、私もマーカーを引いてきました。この本の“最後”が、とても好きで」

“最後”

その言葉だけで、胸が痛んだ。
自分の暗号に気づいたように、も同じ手法を返している。

ホークスは恐る恐るページを開く。
震える指でマーカーの“最後の文字”を拾っていく。

拾い上げた短い文が、胸に突き刺さった。

『ありがとう でもひとりにしない ちからになりたい』

読み終えた瞬間、ホークスの呼吸が止まった。

目の前が、少しだけ滲む。

“来るな”の暗号を理解していた。
危険も、立場も、すべてわかっていた。

なのに。

は、それでも“踏み込むほうを選んだ”。

ホークスの顔がゆっくりと上がる。
潤んだ金の瞳が、苦しげに、でもどうしようもなく惹かれるようにを見つめた。

あまりにも重い沈黙が2人の間に落ちる。

ホークスは心の中でひとつ、静かに崩れた。

――守れるかもしれない、じゃない。
“守れないかもしれない”。
その未来が、初めてリアルな恐怖として喉を掴んだ。

荼毘の影へ続く一歩が、2人のすぐ足元まで迫っていた。
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