第51章 祝福の日、初めて知る幸せ
歌が終わると、砂藤がケーキを切り分け始める。
甘い香りがふわりと広がり、みんなの表情も自然とほころんでいく。
そんな中、轟は何かを思い出したように席を立った。
すぐに紙袋を抱えて戻ってくる。
それをテーブルへそっと置いた。
葉「轟、それなにー?」
轟は袋を開けながら答える。
轟「砂藤」
砂「ん?」
轟「悪ぃ。この皿に入れてくれねぇか」
そう言って取り出したのは、から贈られた和食器だった。
落ち着いた色合いの、大きめの器。
明らかにケーキには少し大きすぎる。
芦「えー!なにそのお皿めっちゃかっこいい!」
上「いや、でもケーキにはでかくね?」
轟は器を大事そうに見つめながら、小さく笑った。
轟「あぁ」
少しだけ照れくさそうに。
轟「……でも、にもらったやつだから」
その一言だけで十分だった。
轟「これで食べたい」
「……っ」
思わず胸が熱くなる。
そんなと轟を交互に見た芦戸が、にやりと笑った。
芦「なるほど、そういうことね〜♡」
その反応に、みんなから笑いがこぼれた。
砂藤も優しく笑いながら頷く。
砂「了解!」
そう言って、轟の器へケーキをそっと乗せた。
その様子を見ながら、みんなは改めて思う。
は、生徒一人ひとりをちゃんと見ている。
朝一番に「おめでとう」を伝えて。
その人らしいプレゼントを選んで。
何気ない一言まで覚えていて。
そんなことを、まるで当たり前のようにやってのける。
だからこそ、気付けば誰もが心を惹かれてしまうのだ。
やがて全員の前へケーキが並んだ。
飯「それでは!」
飯田の声に合わせて、みんなが笑顔になる。
「「「いただきます!」」」
甘いケーキ、温かな紅茶。
楽しそうな笑い声、何気ない会話。
どれも特別ではない。
けれど、今日という日だけは、そのすべてが特別だった。
轟は一口、ケーキを口へ運ぶ。
轟(……うめぇ)
思わず目を細める。
ケーキが美味しいからなのか。
それとも、この器で食べているからなのか。
あるいは——。
みんなに祝われながら食べているからなのか。
理由は分からない。
それでも、胸の奥は不思議なくらい温かかった。