第50章 揺らぐ静寂、寄り添う想い ※
机に本を置き、恐る恐るページを開く。
パラ…パラ…
そこには大量のマーカー。
そして、一枚の便箋。
指先が震える。
『〇日、会いませんか?19:00に〇〇駅で待ちます』
淡々としているのに、どこか乾いた文面。
(……啓悟、これ…何?なんで?)
違和感が胸に波のように広がる。
そして、ふっと――あの日の声がよみがえる。
──「俺といると……まで色が濁る」
──「言ったら…もう戻れんくなる」
──「離れんと…止まれんくなる」
ぼやけた視界の中で、あの日のホークスの背中が浮かぶ。
あの時、最後みたいな顔をしていた。
触れたら崩れそうな声で、言いたくもない言葉を押し付けて、自分を手放した。
胸がえぐられるように痛む。
そのとき、脳裏にふっと蘇る。
──“2番目のおすすめ”。
(……2番目?)
ページを開き、マーカーの「2文字目だけ」を追う。
震える指で、必死に。
浮かび上がったメッセージは、ホークスの軽薄な笑顔とは真逆の、切実な言葉だった。
『くるな だび きけん あなたをまもるため どうか こないで』
ページを閉じた瞬間、喉の奥がぎゅっと詰まり、呼吸がひっかかった。
(荼毘…?ということは…)
胸の奥で何かが千切れる音がした。
——ホークスは今、敵連合に潜入している。
——監視されている。
——言葉も、映像も残せない。
だから、本に。
だから、暗号に。
だから、あんな嘘みたいな笑顔で、私を避けた。
(……私を守るため……?あの日のあの言葉も……だから……?)
堪えていた涙が、ひと筋こぼれた。
助けたいのに、触れることすらできない距離。
声をかけたら崩れてしまいそうなホークスを、支えられる力が自分にはないことが悔しくてたまらない。
胸に手をあてて、ぎゅっと押さえる。
(啓悟……1人でどれだけ大きなものを背負ってるの…?)
はそっと目を閉じて、静かに決意を固めた。