第50章 揺らぐ静寂、寄り添う想い ※
その一言で、爆豪と轟の眉がピクリと動く。
緑谷も思わず顔を上げる。
爆「……なんでテメェがその名前出すんだよ」
轟「……知り合いなのか?」
ホークスはいつもの笑顔を浮かべながら、しかしどこか探るような目をして答えた。
ホ「いやいや〜。前に職場体験で挨拶来てくれたろ?可愛かったからさ、今度デートでも誘おうかな〜なんて」
爆豪と轟の表情が一瞬で“最悪の顔”になる。
爆「…テメェみてぇなチャラついたやつに、気軽に触らせていい人じゃねぇんだよ」
轟も隣で静かに続ける。
轟「あの人が困るようなことは、しないでくれ」
その声音には、感情を抑え込んだ、嫉妬と警戒が滲んでいる。
ホークスは肩をすくめる。
ホ「そ?残念……あ、じゃあこれだけでも渡しといて〜」
ホークスは、自分と同じ本をひょいと掲げて笑った。
ホ「じゃ、インターン頑張って! それと、」
指をひらひらさせながら、軽い声で続ける。
ホ「先生にも伝えといて!マーカー部分だけでも読んでおいて!2番目のおすすめなんだから!!……って、絶対ね!!」
軽い。
いつも通りの調子。
それ以上でも以下でもないように見える。
そう見える“ように”完璧に作られた笑みを残して、ホークスは一瞬で空へ跳んだ。
上空へ舞い上がる羽音が、あっという間に小さくなっていく。
爆豪は眉をひそめ、本を持ち上げて眺める。
爆「クソが…、にちょっかいかけンじゃねぇよ」
轟は淡々と本を捲りながら、マーカーの多さに目を瞬いた。
轟「……多いな」
緑谷は、ホークスの言葉を完全に善意として受け取る。
緑「まぁ、戻ったらちゃんと渡そう!ね!」
爆豪は肩をすくめる。
爆「……あの鳥、いちいち余計なもん渡してくンなよ」
轟も軽く息をつき、特に深く考えることなく本を閉じる。
そのまま、3人は現場に戻るエンデヴァーの背中を追って走り出した。
誰も知らなかった。
それがへ宛てた警告であり、言葉を伝える唯一の手段であることを。