第49章 降り積もる恋、滲む涙 ※微
深く、長く、息を奪われるほど静かなキス。
触れるだけの軽いものじゃない。
欲しさがにじんだ、理性ギリギリを越えた本気の口づけ。
途中で離れたかと思えば、相澤はの腰を引いて、もう一度、今度はさらに深く重ねてくる。
も相澤を受け入れ、背中に手を回した。
「んんっ…」
唇が離れたとき、相澤の呼吸は珍しく乱れていた。
額をコツンとくっつけて囁く。
相「止められなくなる…」
低く、苦しそうで、でも嬉しそうで。
そんな声を耳元で聞かされるだけで、心臓が跳ねた。
廊下に漂う冬の冷気とは裏腹に、2人の距離だけが濃密に熱い。
でもその熱の中で、の胸にふいに別の影が差し込む。
大きな赤い羽。
笑った時の、あの軽い声。
ホークス。
(……っ)
ぎゅっと胸が締めつけられる。
忘れたわけじゃない。
忘れられるわけがない。
ホークスが救ってくれた日。
ホークスが触れてくれた温度。
“好きだ” と自覚したあの日。
全部、まだ胸の奥に残っている。
でもさっきの相澤のキスが、その記憶をゆっくり、静かに、上書きしていくように感じてしまって。
(……そんなの、嫌なはずなのに)
寂しい。
忘れていくのが怖い。
あの想いが薄れていくのが苦しい。
なのに、胸の奥にふわっと広がるのは、なぜか嬉しいという気持ちで。
(やだ……こんなの……)
切ないのか、嬉しいのか、失っていくのか、手に入れたいのか。
どっちに傾いているのか、自分でもわからなくなる。
ただ一つ確かなのは、相澤の指が頬を撫でるたび、その上書きがまた一段深く進んでしまうこと。
相「……大丈夫か?」
優しい声。
触れた指先が、いまの混乱をすべて見透かすようで。
その優しささえ、ホークスの記憶をまた少し遠ざけてしまう。
涙じゃないのに、胸がきゅっと痛い。
でも同時に、満たされるように暖かい。
ぐちゃぐちゃで、むちゃくちゃで、もうどうしたらいいかなんてわからない。
ただ、相澤の目に映る自分だけが、確かな“今”だった。