第47章 揺れる心、ほどける夜 ※微
校舎の影に入る頃、はようやく深い息を吐いた。
「……はぁ……」
ほんの少し、気持ちが緩んだ——その瞬間。
「……オイ」
不意に声が落ちた。
前を見ると、爆豪が壁にもたれて立っていた。
「……勝己…。なんで……ここに……?」
爆「……知らねェよ」
怒ったような、でもどこか気まずそうな顔。
爆「……なんか、胸クソわりぃ気がして……外に出たら……が、沈んだ顔して歩いてきた。それだけだ」
偶然なのか、必然なのか。
爆「……気づいて欲しくねぇなら、そんな顔して歩くな」
意地悪な言葉なのに、まっすぐ心配してくる声。
爆「……ほら。来いよ」
強く差し出した手は、のぐちゃぐちゃな心を受け止めるための“救い”だった。
ただただ、爆豪に身を任せ足を進める。
周りなんて見てなかった。
気付けば、雄英校舎の屋上の扉の目の前だった。
扉が閉まる音と同時に、強い風が2人の間を抜けた。
は、少し遅れて振り返る。
爆豪は歩いてきた勢いのまま、しかし珍しく言葉を探していた。
目の奥がずっと揺れている。
爆「……無理すんな」
それだけだった。
でもその声は、怒鳴り声でも、苛立ちでもない。
押し殺した息が混じった、どうしようもなく優しい声。
の胸がきゅっと痛くなる。
爆豪は一歩近づいて、視線を逸らさないまま続ける。
爆「今日の……見てらんねぇ」
その目は、まるで「気づきたくなかった」みたいに悲しそうで。
いつもは強く握られる手が、ためらいながら触れる。
それだけで、の張り詰めた何かが、きしむ。
爆豪は喉を鳴らして、言った。
爆「……泣きてぇなら、泣けよ」
その瞬間、堤防が壊れた。