第1章 lie and…【瀬呂範太】
終わった…全てが素晴らしかった。
友人と私は、満ち足りた顔できっと会場を後にしたと思う。スタジアムを出たあたりで、友人はポロポロと話し始めた。
「良かった…だけでは言い表せない」
「わかるよ…ファンサ、もらっちゃったね」
「だよね!!てかあのハンくんの投げキッスは、絶対に向けてたよ!」
やっぱりー!?と赤く染まる頬を両手で抑えれば、記憶に新しいファンサが蘇る。
きっと自分だけに向けてではないとは思うけど、それでもそう思い込むことによってより一層特別感が増す。
友人の方も、推しを間近で見られたこと、席が良かったこと、セトリが良かったこと…と嬉しいこと続きで大満足のようだった。
これはもう、恋をした時に似た感覚だった。
今はもう、推しとライブのことしか考えられなかった。
聞き慣れた声が頭上からかかるまでは。
「あれ?昼間のお姉さんたちじゃん。ライブ、どうだった?楽しかった?」
思わず私は、ひゅっと息を吸い込んだ。
夕方以来の、あの声。なんでまた…
屋外規制退場の整理をしている、彼にまた会ってしまうなんて。
「こんばんはーセロファン。また会うなんて偶然すぎ!ライブ、超良かったですー!私たち、めっちゃ席近くて、…この子なんか、ハンくんから投げキッスもらっちゃってもうときめいちゃったよねー!」
思わぬ変化球とカミングアウトに、目の前がクラっとする。
「は、はは…そう、もうなんか言葉では表せなくて…」
一気に口の中の水分が失われた気がした。
もう暗いのにメットをまだ被っている彼の表情はわからないが、その暗闇が恐怖を倍増させる。というか、夕方といいなんでこう場所がわかるんだ…?
「へぇ良かったじゃん。なに、顔赤くしちゃって、彼氏が妬くぞー」
「そうだよ、半分嘘ついて行ったようなもんだから、帰ったら埋め合わせしないとだよ!」
友人の立て続けの豪速球をもろに食らい、その後何を話したかとか、いつ彼と離れたかとか、なんだかもう全てが曖昧になってしまい、ライブの余韻どころじゃなくなってしまった。
ただただ、頭の中には「帰りたくない」という気持ちがループし、それと同時に明日は私も彼も休みということを思い出して、本気で今日寝る場所を変えようか悩んだ。
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ごめん続きます▶