第8章 変わり行くもの
【マービンside】
本部襲撃の日から、何を食っても味のない粘土を食っているような、好きだったジェリーのビーフシチューでさえも、まるで泥水を啜ってるような感覚だった。
腹がどうしても減るから無理矢理飲み込んでも、胃の中が空っぽになるまで吐き出してしまう。
あの時俺はアクマのウィルスに侵食される感覚を確かに感じていた。目が覚めた時は生きていることに頭がハテナで埋め尽くされていたが、俺の身体はどうしちまったんだ。
トイレの外から俺を心配してるロブの声がする。
「だいぶ顔色悪いな…。マービン、班長には伝えとくから少し医務室で休んでおいで。」
腹、減った。
口の中に、肉の味が広がる。目の前に置いてある大量のステーキを無我夢中で口に運んだ。久しぶりの食事だから、美味くて仕方ない。
腹が落ち着いてから、ようやくここがさっきまでいたトイレじゃないことに気づいた
「やっと正気になったか。」
「レオナ、さん。」
ティアの母のレオナは鏡を通して場所を移動できたりするんだっけか。なら俺はどこか別の場所に連れてこられたのか。
「間一髪だったな。お前、同じ科学班のやつを食いそうになってたぞ。」
「…は?」