第3章 ふたり、それぞれの午後
家の門が見えた。
ここまでくれば、自然と足が緩む。
はバッグを持ち直して、
ちらりとランダルを振り返った。
「一緒に帰ってくれてありがと」
何でもないみたいな顔で、
何でもないみたいな声だった。
ランダルは、喉の奥で声をつまらせた。
言いたいことが、あった。
でも、うまく言葉にならなかった。
「……うん」
かろうじて、それだけ。
はふわっと笑った。
「またね、ランダル」
そう言って、軽く手を振った。
ランダルも、ぎこちなく手を挙げる。
そして、彼女は門をくぐり、
玄関へと向かっていった。
細い背中が、夕焼けの中へ、
ゆっくりと吸い込まれていく。
ランダルは、そこに立ったまま、
じっとその後ろ姿を見送った。
胸の奥に、どうしようもない熱が、
しんしんと積もっていくのを感じながら。