第12章 秘密の日記
「今日は学校中を巡回して、みなさんのバレンタインカードを配達します!」
ロックハートの甲高い声が大広間に響き渡った。
「そしてお楽しみはまだまだこれから!スネイプ先生に『愛の妙薬』の作り方をお見せいただきましょう!」
スネイプの表情は一瞬で凍りつき、毒薬の瓶を握りしめる幻が見えるようだった。
「フリットウィック先生は『魅惑の呪文』について、この世で1番詳しい方です!」
ロックハートが続けざまに言うと、小柄なフリットウィック先生は両手で顔を覆い、机に沈み込んでしまった。
「…先生たち、本当に気の毒」
チユは同情混じりに呟いた。
ロンは頭を抱え、呻いた。
「ハーマイオニー、頼む……君、あの46人の中に入ってないよな?」
すると彼女は急に、鞄の中をガサゴソ探りだし、声を濁した。
「え、えっと…時間割…どこかしら……」
ロンはがっくり肩を落とし、チユは思わず吹き出しそうになるのをこらえた。
その日の授業は、まるで地獄絵図だった。
『薬草学』の温室では――。
「バレンタインカードです!」とロックハートの命を受けた金ぴか小人がずかずかと入り込み、チユに突進してきた。
マンドレイクの植え替え用の手袋をはめていたチユは、慌てて両手を引っ込める。
「ちょ、ちょっと待って!今は……!」
案の定、マンドレイクの鉢をひっくり返してしまい、スプラウト先生が悲鳴をあげる。
『変身術』の教室では、小人が机の間をうろついてはハープを鳴らし、カードを力ずくで渡そうとする。
「ちょっと!インク瓶蹴らないで!」
チユは必死で自分の羽ペンと羊皮紙を庇った。紙吹雪まみれになった教科書はもうぐちゃぐちゃだ。
「ポッター!ラブレターだ!」
とある小人が叫んで、ハリーの背中に飛びついた。
ハリーが必死に振りほどこうとするが、相手は短い足に似合わず力が強い。
教室中がどよめき、ロンは机を叩いて笑い転げている。
「笑ってる場合じゃないよ、ロン!ほら、こっち来る!」
チユが指差すと、別の小人が今度はロンに狙いを定めて突進。机ごと押されてロンが椅子からひっくり返った。
授業が終わるころには、教室の隅には破れた封筒やハート型の紙切れが山のように積もり、誰もがぐったりしていた。
「……これ、一日中続くの?」
チユが涙目で呟くと、ハリーも苦笑いした。