第12章 秘密の日記
午後も遅くなって、グリフィンドール生が『呪文学』教室に向かって階段を上がっているときだった。
突如、小人がハリーを目がけて突進してきた。
「オー!あなたにです!ハリー・ポッター!」
しかめっ面の小人は叫びながら、人の群れをひじで押しのけ、ついには1年生の列のど真ん前に飛び出してきた。
そこには偶然、ジニーの姿もある。
ハリーの顔が一気に真っ赤になり、必死に逃げようとした。
しかし小人は容赦なく人のすねを蹴飛ばして進み、あっという間にハリーの前に立ちふさがった。
「ハリー・ポッターに、じきじきにお送りしたい歌のメッセージがあります!」
小人はまるで脅し文句のように言い放ち、ハープをビュンビュンかき鳴らした。
チユは思わず口元を押さえた。
こんなところで歌なんか聞かされたら、ハリーは恥ずかしさで爆発してしまうに決まっている。
「ここじゃダメだって!」
ハリーが必死に言うけれど、小人はお構いなし。
ついにはハリーの鞄をがっちり掴んで引き戻した。
「放して!」
ぐいっと引っ張り合ったその瞬間――ビリビリ!と音を立てて、ハリーの鞄が真っ二つに裂けた。
教科書や羊皮紙、羽根ペンが階段中に散乱し、インク瓶まで割れて黒い染みが広がる。
チユも慌てて屈み込み、教科書を拾い集めようとした。
だが廊下は大渋滞になり、あっという間に人垣ができてしまった。
「何をしてるんだい?」
冷ややかでいやらしい声が響き、チユは顔を上げる。――ドラコ・マルフォイだ。
にやにや笑って、今にも皮肉を吐こうとしている。
そこへさらに、真面目すぎる声が割って入った。
「この騒ぎはいったい何事だ?」と、パーシー。
ハリーは必死に物を鞄に突っ込み、逃げようとしたのに――小人が膝に飛びつき、あっさり倒されてしまう。
「これでよし!」
小人はハリーのくるぶしに腰かけ、堂々と宣言した。
「あなたに、歌うバレンタインです!」
廊下中の視線が集まり、チユは思わず両手で頬を覆った。
(ど、どうしよう……!これ、絶対に忘れられないバレンタインになっちゃう…!)