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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第12章 秘密の日記


朝、大広間に足を踏み入れた瞬間、チユは思わず立ち止まった。
「……部屋、間違えたのかな」


壁という壁がけばけばしい大きなピンクの花で埋め尽くされ、天井からはハート形の紙吹雪がひらひらと舞い落ちている。
光景のあまりの甘ったるさに、目の奥がチカチカするほどだった。


グリフィンドールのテーブルに近づくと、ロンはベーコンを前にして吐き気をこらえるような顔。
一方のハーマイオニーは、クスクス笑いを抑えきれず肩を震わせている。



「な、なにこれ……?」
チユは思わず2人に問いかけた。


「バカげてる、の一言だな」
ロンが机に額をぶつけそうな勢いで嘆き、渋々指を伸ばして先生たちのテーブルを示した。


そこには、けばけばしいピンクのローブをまとったロックハートが立っており、にっこり笑って「静粛に」と手を挙げている。
両脇に並ぶ先生たちは、石像のように固まっていた。



ハリーが隣に腰を下ろし、紙吹雪を払いながらぼそりとつぶやく。
「……ベーコンにまで降ってきてる」


「食欲無くなるね」
チユは眉を寄せ、フォークで皿をカツンと鳴らした。


マクゴナガル先生の頬がピクピクけいれんしているのが見える。
スネイプに至っては、まるで誰かに『骨生え薬』を一気飲みさせられた直後のような表情。


「バレンタインおめでとう!」
ロックハートが声を張り上げた。


「46人の方々からカードをいただきました! ありがとうございます!さあ、みなさんをちょっと驚かせようと思いまして……」


ポン! と手を叩くと、玄関ホールの扉が開き、無愛想な小人がぞろぞろ入ってきた。
金色の翼を背負わされ、ハープを抱えている。


「わたしの愛すべき配達キューピッドたちです!」
ロックハートが自慢げに言い放つ。


「……悪い夢?」
チユがぽつりとつぶやくと、ロンが机に突っ伏しながら呻いた。
「夢ならいい。目が覚めればこの花も消えてる……」

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