第12章 秘密の日記
淡い陽光がホグワーツをやわらかく包み込み、長い冬の冷たさを少しずつ押しのけていた。
最近、城の中の空気がどこか軽くなったようにチユは感じていた。
ジャスティンとほとんど首無しニックが襲われてから、新たな事件は起こっていない。
医務室ですれ違ったとき、マダム・ポンフリーがフィルチに向かってうれしそうに話しているのをチユは耳にした。
「マンドレイクはもう思春期に入ってきましたよ。隠し事をするようになったり、情緒不安定でね。にきびが消えれば2度目の植え替えです。そのあとは煮るだけ……ミセス・ノリスも、もうすぐ戻ってきますわ」
それを聞いて、チユは胸をなで下ろした。
――もう大丈夫、なのかな。
ほんの少しでも安心できる言葉に、体の緊張がほどけていく気がした。
けれど、誰もが同じように楽観しているわけではなかった。
ハッフルパフのアーニー・マクミランはまだハリーを疑っていたし、ピーブズに至っては人の多い廊下で踊りながら、
「オー、ポッター、いやなやつだ〜♪」
とわざとらしい歌を叫んでいる。
チユは思わず立ち止まり、じりじりと拳を握った。
「……最低」
あんな風にからかわれて、ハリーはきっと傷ついているに違いない。
隣を歩くハリーが何も言わず黙っているのが、かえって胸に痛かった。
そんな中、さらに状況をややこしくしているのはギルデロイ・ロックハートだ。
「ミネルバ、もう心配ありませんよ!」
変身術の教室前で、彼は大げさな声を張り上げていた。
「秘密の部屋は、もはや永久に閉ざされました! 犯人は、私にこてんぱんにされる前に観念したんですな!」
胸をドンドン叩いて、ウィンクまでしてみせる。
チユはあっけにとられて口をぽかんと開け、ハーマイオニーの袖をそっと引っ張った。
「ねえ…ほんとに、自分が止めたって思ってるの……?」
「…ええ。たぶん本気で」
ハーマイオニーのため息が、チユの気持ちをさらに重くした。
「そう! 今、学校に必要なのは気分を盛り上げることだ!」
ロックハートは最後にそう叫んで、芝居じみた足取りで去っていった。
チユはその背中を目で追いながら、唇をきゅっと結んだ。
「…なんか、嫌な予感がする」
その予感は、翌日の朝、いやというほど現実になるのだった。