第12章 秘密の日記
「『秘密の部屋』を開けた人が50年前に学校から追放されたことは知ってるでしょう」
ハーマイオニーの声は張り詰めていた。
「そして―T・M・リドルがその時期に『特別功労賞』を受けているのもね。もしリドルが“スリザリンの継承者”を捕まえたことで賞をもらったのだとしたら……」
彼女はぱしんと日記を指で弾き、4人の目をまっすぐ見据えた。
「この日記には、すべてが記されているかもしれないのよ。『部屋』がどこにあるのか、どうやって開けるのか、その中にどんな生き物が潜んでいるのか。――そして今回の襲撃事件の黒幕が誰なのかも!」
暖炉の火がぱち、と弾けた。
「なるほどな」ロンがふてぶてしく腕を組み、「そいつはすばらしい論理だよ、ハーマイオニー」
「でしょ!」ハーマイオニーの目がきらりと光った。
「ただなぁ……ほんのちょっとだけ、ちっちゃな穴があるんだよ」ロンが言い、わざとらしく日記を開いた。
「中身が――なーんにも書かれてないってこと!」
「……それは確かに」チユが小さな声でつぶやいた。
けれど、その目は妙に真剣で、ふんふんとうなずいてみせる。
「透明インクかもしれないわ!」
ハーマイオニーはためらいもなく杖を抜き、「アパレシウム!現れよ!」と唱える。
3度、日記を軽く叩く。
……しかし、真っ白なページは沈黙を守った。
「ちぇっ……」ロンが鼻を鳴らした。
だがハーマイオニーは臆さない。鞄をごそごそ探り、鮮やかな赤いゴムを取り出した。
「『現れゴム』ダイアゴン横丁で買ったの」
彼女はページをゴシゴシとこすった。――だが、やはり何も現れない。
「だから言ったろ。何もないんだよ」ロンが呆れ声をあげる。
「リドルはクリスマスに日記をもらったけど、結局、何も書く気にならなかったんだ」
「でも……」チユが小首をかしげ、ぽつりと口を開く。
「もし……日記が持ち主を選ぶ“魔法の品”だったら?――ねえ、そういうのって、あるでしょ?“選ばれた人だけが読める”とか……」
暖炉の炎がぱっと大きく揺れ、まるで部屋の空気ごと彼らの会話に引き込まれたかのようだった。
ただの空っぽな日記――そのはずなのに、4人の胸の奥に得体の知れない不安が巣食い始めていた。