第4章 恋人2日目
話を逸らされたので葬儀屋の方をジト目で見るが、葬儀屋はスルーしてシエルと話し始めた。
「僕達は女王からのお達しでとある事件について追っている。最近なにか変わった死体はなかったか?」
「ああ、来たよ...それも可哀想なほどボロボロなお客さんがねえ」
女王やら死体やら、自分みたいな平民が聞いてはいけない内容な気がしたので席を外すことにした。
店の外に出ると、扉の前で黒猫が毛ずくろいしていた。
ちょうどいい暇つぶしになりそうだ。
そんなことを考えながら猫を膝上に乗せ、肉球をぷにぷにと揉んだり、撫でたりして時間を潰した。
一方その頃店の中ではーー
「ボロボロな死体?」
「おかしいですね、広報紙では外傷は極めて少ないと報道されていましたが…」
「ああ、その通りさ。でも、それはあくまで“外側”の話」
「と言うと?」
セバスチャンが葬儀屋に問いかける。
「中身さ」
「中身?」
人体模型を抱え、臓器をトントンと指さす葬儀屋にシエルが聞き返した。
「最近小生のところに来るほとんどのお客さんはみんな中身がボロボロでねえ…
それも臓器が欠けているとかじゃないんだよ」
「人身売買ではないのか…」
「まあ、外傷なしに臓器を取り除くのは不可能に近いからねえ。最近小生が見たお客さんで言うと、内蔵がドロドロに解けていたり、肺疾患があったり、肝炎だったり…
色々な症状の子がいたさ。」
「なるほど、外傷は少なく内蔵に何かしらの欠陥がある…となると、薬物投与の可能性が高いですね」
セバスチャンは葬儀屋に渡された資料を見ながら言った。
「注射跡のあるお客さんもいたから多分そうだろうねえ…。さあ、小生の話せることはこれぐらいかな?」
「ええ、ご協力感謝いたします。」
「ヒッヒ…伯爵の為とあらばお安い御用さ」
セバスチャンはニッコリとしながら感謝を述べ、それに対して葬儀屋はヒラヒラと手を振る。
「邪魔したなアンダーテイカー。行くぞ。セバスチャン」
「御意」
シエルがドアノブに手を掛け、扉を開くとそこには3匹の猫に囲まれ、猫と喋るリリスがいた。
「それでさ、走り回ってただけで品がないとか言われてんの。これだから嫌だよねえ、頭にサビの着いた大人たちは」
「ニャァオ」
「やっぱりそう思うよね!はあ、僕の味方は君しかいないよ〜〜。」