第1章 舞踏会の知らせ
「そういえば、リリスは知ってる?今度街にあるお屋敷で舞踏会が開かれるんだって!」
「舞踏会?」
そんな会話をしていたのは、友達のスピアと優雅なティータイムを過ごしている時のことであった。
スピアの目はキラキラと輝いていたが、舞踏会などというものは、自分たち庶民にとっては馴染みの無さすぎる行事である。
それを分かっていたリリスは、スピアのように目を輝かすことは無かった。
「舞踏会だなんて僕たちには縁が無さすぎる話じゃないか…。それがどうしたの?」
リリスはスピアのキラキラとした声色とは反対に、少し沈んだような声色で言い放った。
「確かに、舞踏会って言われたら縁がないように感じるよね。でもね、その舞踏会には誰でも参加していいんだって!!」
「誰でも?」
そんなことがあるのか?と思い、思わず聞き返す。
「うん。私たちみたいな庶民でも、誰もが名前を知っているような貴族でも!誰もが参加する権利を持ってるらしいよ!」
「へぇ!主催者は随分と気前が良いね。」
「ほんと、凄いよね。……」
何やらスピアがチラチラとこちらを見ている。
「…?どうしたの?」
その不自然な視線にリリスの頭にはハテナマークが浮かび上がっていた。
「えぇと…」
スピアは両手の人差し指を捏ねながら、落ち着きの無い様子で口を開いた。
「もし…リリスが興味あるなら、一緒に行かないかなぁ…なんて…」
スピアは照れくさそうに、キュルキュルとした目でこっちを見つめてくる。
なんだ、そんなことか。
「あははっ、そんなにモジモジしなくてもいいのに。もちろんスピアが行くのであれば、僕もご一緒するよ!!」
自分みたいな庶民が舞踏会に参加して、ましてや貴族とコミュニケーションを取れる機会なんて、なかなかないだろう。その上、小さいころに絵本で見た御伽話の世界が現実になるというのも、なんだか胸が踊る。
これから、いつこのような機会が訪れるか分からない。人生は1度きりだし、行ける時に行っておかないと。
「本当に!?ありがとう!リリス!舞踏会はちょうど一週間後に開かれるらしいから、それまでに色々と揃えないと!」
スピアは勢いよく立ち上がり、リリスの手を引いて走り出した。
「うわぁっ!ちょっと、危ないよ!」