第1章 目覚め
「いたた…、傷だらけだよ…」
私はお風呂の湯船に浸かりながら、じんわり痛む体をさすった。
組み手や訓練の後、あちこちに軽い傷がついてしまったけれど、どこか誇らしげな気持ちがあった。
「ヒツキ、前より明るくなったね。」
パイロがふとそう言うと、私は驚いたように顔を向けた。
「本当に?」
自分ではあまり気づかなかったけれど、もしかしたら本当に少しずつ変わっているのかもしれない。
毎日が忙しくて、時々忘れがちだけれど、この生活が楽しいと感じることが増えてきていた。
「うん、前より笑顔が増えたよ。」
パイロの言葉に少し照れながら、私は湯船にゆっくりと体を沈めた。
(確かに楽しいって思うことが増えたなぁ…)
お風呂から上がると、カイトが夕食をテーブルに並べていた。色とりどりの料理が並べられていて、その香りが食欲をそそる。
「わあ、美味しそう!」
私はパイロと目を合わせ、嬉しそうに席についた。
***
カイトは静かに食後の片付けを済ませ、二人が眠っているベッドを見つめながら、心の中でつぶやいた。
(まだ半年も経っていないのに、ここまで成長できるとは思わなかったな)
ヒツキとパイロは、最初は生きることすら危うかったが、今では強くなり、確実に自分の足で歩み始めている。
ヒツキは、始めは力が足りないと感じていたが、その分を補おうと着実に成長していた。
パイロもまた、彼なりの強さを見つけ始めている。音や空気の流れを感じ取ることで、他の誰よりも鋭い感覚を持つようになった。
カイトはその姿を見ながら、少し感慨深げに呟いた。
「そろそろ教えてもいい頃か…」
自分の中で、ひとつの決断が固まった。
彼の中では、まだその力が未熟で、恐れがつきまとうことも理解していた。だが、この子達は旅団に顔を見られていると聞く。
ここで教えておかねば、再び奴らに出くわした時、二人が命を落としてしまうだろう。
「ヒツキ、パイロ……お前たちはまだ知らないだろうが、この世界にはもっと広い力が存在する。それを使いこなすには、まだ少し時間がかかるだろう。挫けず、頑張れよ。」
カイトはそう思いながら、静かに二人の眠る姿を見守った。