第1章 目覚め
その日の夜
私たちはテーブルを囲って、食事をとっていた。
夕飯はシンプルなスープと焼いたパン。山の中での生活に慣れてきたとはいえ、やはり食事の時間はほっとするひとときだ。
スープを一口飲んで体の芯から温まっていると、ふとカイトが口を開いた。
「お前たちは、これから何事にも生き抜く術が必要になる」
唐突な言葉に、私はスプーンを持つ手を止めた。
「……生き抜く術?」
隣に座るパイロも、考えるように手を止める。
カイトは私たちをじっと見つめ、真剣な表情で言葉を続けた。
「どんなに身体能力が向上しても、環境に適応できなければ生きてはいけない」
私たちは顔を見合わせた。何の話をしているのか、まだよく理解できていない。
「……つまり、どういうこと?」
カイトはスープを飲み干すと、静かに答えた。
「明日からは、身体強化だけでなく、狩りや食事の確保、火起こし、野宿の仕方……俺の知っているあらゆる生存術を教える」
「えっ」
私は思わず声を上げた。パイロも驚いたように少し身じろぎする。
「食材もなくなってきたからな。いい機会だ」
カイトはそう言って、席を立ち、薪をくべる。火がパチパチと音を立て、炎がさらに大きくなった。
「狩り……ってことは、動物も?」
「そうだ。獲物を仕留め、さばき、食べる。自分たちで生きるための糧を手に入れなければならない」
私は息を呑んだ。今度は生きる力を身につける訓練……。
「……パイロは?」
私は思わず隣のパイロを見た。彼は視覚がない。狩りなんてできるのだろうか?
「もちろん、パイロにもできることをやってもらう。目が見えなくても方法はいくらでもある」
カイトの言葉には迷いがなかった。
「……僕も、やる」
しばらく黙っていたパイロが、小さく頷いた。
「……私も、やる!」
私も覚悟を決めて、カイトを見据える。
カイトはニヤリと笑った。
「そうこなくちゃな」