第1章 目覚め
「1時間なんてしんどいって思ってたけど、意外に走れるものだなあ……。」
息を整えながらそんなことを考えつつ、スタート地点に戻る。汗がじんわりと滲んでいるけれど、獣の血(?)が混ざっているからだろうか、あまり疲れを感じない。
戻ってくると、パイロとカイトが何かをしていた。
カイトが何かを指示しているようで、パイロは真剣な顔で頷いている。
「二人とも何してるの?」と聞くと、パイロが真剣な口調で言った。
「僕も修行することにしたんだ。」
「えっ……でも……」
思わず口ごもる。パイロの気持ちは分かる。
目が見えないのに危険なことをするのは……と心配になってしまう。
そんな私の気持ちを見透かしたように、カイトが肩をすくめて言った。
「目が見えないハンターもいるからな。パイロの気持ちも尊重してやれ。」
「……そっか……。」
考えてみれば、パイロだってずっと何かをしたくて悩んでいたんだと思う。
私がハンターになるって決めたことで、彼はきっと焦っていたんだ。
私だけが前に進んで、パイロを置いていくような気持ちにさせていたのかもしれない。
「ヒツキ。」
パイロがそっと私の手を探して掴む。
「ヒツキにだけ負担はかけさせない。僕も強くなりたいんだ。」
「……パイロ。」
パイロはずっと、自分の無力さを悔やんでいたんだ。
あの夜、パイロが泣きそうな顔で「危険な目にあってほしくない」と言ったことを思い出す。
「わかった。一緒に頑張ろうね。」
そう言うと、パイロがふわりと微笑んだ。その笑顔はとても柔らかくて、だけど、決意のこもったものだった。
「パイロ、続きをやるぞ。」
カイトの声が響く。
「うん!」と元気よく返事をするパイロ。さっきまでとは違う、どこかスッキリした声だった。
私も頑張らないと——と思ったのも束の間。
「ヒツキ。」
カイトがニヤッと笑う。
「まだまだ元気そうだな。夕方まで走ってこい。」
「……え?」
その言葉が信じられず、思わず固まる。
「ほら、さっさと行け。」
「……うぅぅ……」
項垂れながら、渋々走り出す。体力作りは大事なのは分かるけど、これはさすがにキツイ。
こうして、私たちの修行の日々が始まった。