第1章 目覚め
翌朝、朝食を終えたヒツキとカイトは外に出て行った。
僕はそのまま外の切り株に腰を下ろし、村から持ち出した唯一のもの、アイリッシュハープを抱き寄せて座った。
弦を軽く弾きながら、どこか心の中では落ち着かない気持ちが渦巻いていた。
「昨日も言ったが、修行は地獄だぞ。」
カイトの声が遠くから聞こえてきた。
「とりあえず、身体能力をあげることから始めるぞ。この山を1時間、全速力で走ってこい。」
「えぇぇぇ…」という声が耳に入る。でもすぐに、駆け出していく足音が響いた。
僕は、ヒツキの足音が聞こえなくなるのをじっと待った。
少ししてから、カイトの方に躓かないようにゆっくりと歩いて行き、彼が僕の姿に気づくと、「どうした?」と手を取ってくれる。
「カイト…。」
僕は少し躊躇いながらも、ゆっくりと言葉を発した。
「僕にも…修行をしてください。」と言うと、カイトが少し驚いたように息を呑むのが感じ取れた。
「お前も...?」とカイトは少し考え込んだ。
「ヒツキにこれ以上負担をかけたくない。目が見えなくても、僕にできることがあると思うんだ。」
僕はその気持ちを伝えたくて、言葉を続けた。目が見えないことが、僕にとってはただの現実だ。
だけど、それが全てだと思っているわけじゃない。僕には、見えない世界でしかできないこともあるはずだと思う。
「覚悟は出来てる。」
カイトは少し黙って考えているようだった。その後、少しだけ息をつき、僕を見つめるようにして言った。
「…仕方ないな。」
彼の声には、どこか渋々という感じがあったが、それでも優しさを感じる。
「いいだろう。じゃあ、無理のない範囲での筋トレや、音や感覚を鍛えることから始めるか。」
僕はカイトの言葉に頷く。
目が見えないことを、少しでも前向きに捉えられる気がした。
「ありがとう、カイト。」
カイトは帽子を被ると、小さく笑って言った。
「気を抜くなよ。」