第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
恨まれる、と思っていた。
「心底恨まれたって、これでは仕方がない」って。
相手がいくら、“尊敬”や“称賛”の心を持つ強豪校の強者だからと言って。
人を恨んだり、憎んだりする権利は等しくあるんだから、と。
そんな風に覚悟していた私に向けられたのは、憎悪でも罵倒でもなく。
白く、滑らかそうな、小さな2つの掌だった。
『え…』
下方向から徐々に向かってくるそれらを、視界に収めた時。
急な展開にすぐに反応することが出来ず…
気づいたときには、私の両頬が別の人間の熱を帯びていた。
この時になってやっと、目の前にいる相手選手に、その掌で頬を包まれたのだと気づいたんだ。
私の頬へと触れたその暖かな2つの掌は、暗いトーンのジャージに包まれた2本の腕に繋がっていて。
その腕は、真っすぐに目の前の相手選手へと伸びていた。
戸惑いながらも、またしても私は、目の前にいるその人の瞳を捕らえた。
その涙の根源には、きっと私がいるんだろ?
私が…
この人の「“全中優勝校のPF”になる」というチャンスを、奪ってしまったんだ。
だから、
?「大丈夫だよ、きっと」
だから、私自身にとっても、大切なものであるはずのものを。
同年代の少女から奪ってしまったことに対して、負い目を感じている私が。
『あの…ちょ』
?「胸を張って?」
極端にいえば、勝利を奪ってしまった存在である私が。
?「あなたたちなら、」
今年で引退してしまう、この人が、この時かけてくれた…
?「優勝できるかもしれない」
その言葉一つに。
幼い私が、どれだけ背中を押されたことか。