第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
こちらに向かって新たな人影が近づいてくることには、すぐに気が付いた。
それが他の誰でもなく、私に近づくために向かってきているのだということも。
だから、再び複数のシャッター音が鳴りだしたのを横目に、私はその人物と向き合った。
その、明らかにチームメイトではない人影は、
?「試合、お疲れ様だったね」
と一言だけ、私の目の前で静かに口にした。
少しだけ視線を下げた先で待っていた、その人は…
* * *
それは、最終クォーターのタイムアウト後。
こちらのボールで再開した試合で、相手チームはゾーンディフェンスを取ってきた。
その戦況を打破すべく、私たちは一度、ボールを相手チームに奪われる手段を取ることとなった。
私たちから戦略的に奪ったと思っていたボールが、実は意図的に奪わされていたということに、直前まで気づけなかった相手選手たちは。
“囮”となった私の陰から飛び出した紗恵に、ボールの主導権を再び渡すことなってしまったんだ。
そして、
「速攻!!」
「はいよ〜!」
フロントコート側から聞こえてきた、愛華の声に急かされるように。
紗恵はドリブルで走り出した。
?「待て!行かせるかよ!!」
相手選手は、もちろん紗恵を止めに行く。
だけどそうはさせない。
『あんたこそ待ちなよ…!』