第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
得点源がボールに触れることも許されない。
そんなことになろうものなら、コート上で今まさに戦っている選手たちを越えて。
チーム全体をも巻き込む焦燥が沸き起こり、一様に緊張の色が走ることになる。
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それ以上に、本人の焦りようは桁違いだろう。
その証拠に史奈は、愛華が声を掛ける直前までその現実の前に感情的になり、選手が抱いてはならない負の感情を募らせていた。
フラストレーションは、史奈の中で焦燥が高まるのを加速させ、冷静さを欠くその一瞬を待った。
そしてその瞬間が訪れれば、ファウル認定となる越えてはいけないラインの向こう側に、片脚どころかその全身を史奈に投じさせようとした。
ところがそれは、愛華の言葉で覆った。
点を取ることでしか役割を見出せなかった史奈に、別の道もあるということを気づかせた。
勝利への道は、たった1つではないということを。
それからは史奈を筆頭に、全員がその時の役割…それが暫定的なものだったとしても、その瞬間のチーム内で自分がやるべきことを導き出した。
勝利へと突き進むための、“チーム内での役割”というものを。
私たちの眼前に現れた、「強豪校の手強いディフェンスによってチームメイトが1人欠けた」という初めての戦況。
経験したことも、ましてや突破したこともないその真新しい危機に、対処するためのプレイを考えたんだ。
「一旦冷静になって考えてみるんだ」と。
「それでもいいから考えろ」と…
そうやって、考えて、考えて。
それによって、私たちが追加点以外に何かを得たのだとしたら…
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全ては、対戦校のその戦略があってこそだった。
私たちの目の前に現れた、“危機”と呼称すべき戦況。
それを経て、私たちは新たな力を手に入れた。
つまり、それが“経験値”。
追加点以外に、私たちが得たもの。
文字通り、相手チームの戦略に“育てられた”んだ。