第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
「こんなこと初めてだ」とも、「定理に反する」とも考えた。
しかし同時に、痛いのには“納得に値する原因”が、別にあるからだということに気が付いた。
そして、その“明らかな原因”は、私の背後で、
「詩織ってば大胆~!!」
そう言いながら、お気楽にも笑っているんだ。
突如として私を襲ったのは、詩織だけではなかったと知った。
どうしてそうなったのかは分からないんだが、なぜか私の身体と詩織の腕の間に、
「そんなにウチらのこと大好きなの~?!」
相変わらず私の耳元で容赦なく喋る、紗恵がいたんだ。
あと、それを知って納得した。
私を抱きしめていたと思っていた詩織の腕…
4本なわけがねぇ…
『どうして紗恵(お前)がそこにいんだよ?!』
「え~??なんか詩織の勢いに
巻き込まれちゃったみたいで~♡」
『しれっとお前まで抱き着くな!!』
言い分として「詩織に巻き込まれた」と言った紗恵。
正直、真偽は不明だが、噓はついていないだろう。
現に紗恵は、直前までずっと自分の後ろにいた詩織が、私に抱き着こうと腕を伸ばし。
そして近づこうとしたその間で、半ば巻き込まれで私と詩織に挟まれてしまったんだ。
しかも、よりによって最悪な場所に追い込まれてしまったらしい。