第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
結果的に言えば、私は負けてしまった。
何度考えても百歩譲ろうとも、本当しょーもないことなんだけど。
でも、チームメイト2人に上げ足を取られたりでもしたら。
嫌でも自分の負けを認める他ないだろ。
だから、せめてその不毛な争いからとっとと降りるつもりで、視線を逸らしたんだ。
初めからこの話に意味なんてなかったけれど、これ以上続けるのはもっと無意味だから。
…って、私は大人の対応をしたのに。
それを無駄にするのは、いつだってそうなれない奴なんだ。
“視線を逸らしてから1秒後”とカウントするのも生ぬるい。
それは突如として私を襲った。
気づけなかった理由は1つ。
“見えなかったから”だ。
『ゔげ…!』
再び、私の身体から変な声が絞り出た。
何が起こったのか、わけも分からず困惑していると。
「天~どうしたのよ〜?!」
突如としてやって来たこの重量感…
そして決定的なのはこの声…
“何が起きたか”なんて、考えるまでもなかった。
と言うより、これさっきもやった。
私の頭も、そうやって徐々に状況に追いついた。
今の自分の体が。
その見て呉れがどうなっているのかを。
視界が狭まったのも、最初は迷ったけど勘違いではなかった。
それは、私の視界に映り込んだ見覚えのある白い腕が、明確な原因を物語っていた。
そして、その腕の持ち主は、
「そんな可愛いこと思っちゃって〜!」
そう言って、腕に込める力を更に強めていた。
こんなことをするのは。
抱きつき魔の詩織じゃないなら、いったい誰だって言うんだ。
『懐くな!いってぇ!!』