第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
『別に…“昂った”って言っただけで。
そんな深い意味はねぇーよ…』
だから私は、余計なことを言わないよう、最低限の言葉。
かつ当たり障りのない言葉で回答した。
そしたら、紗恵と詩織は、
「「 ふ~ん 」」
とだけ答えた。
『んだよ“ふ~ん”って…』
2人の言葉を復唱したことに深い意味はないんだけれど、紗恵と詩織を交互に見ながら私はそう答えた。
今の答えで墓穴を掘ったつもりはない。
だから、これ以上言われることはないだろうと思った。
しかし、高低差はあるものの、私の視界を陣取って揃ってこちらを見つめる2つの視線は。
納得するわけでもなく、かと言って諦める様子もなく。
ただ、不満そうにこちらを見ていた。
とは言うものの、「これでやっと終わる」と思った。
勝敗は付かない結果になったけれど、それでも揚げ足取られて好き放題言われるよりずっとマシだった。
しかし、その安堵を打ち砕くが如く。
私を見下ろす詩織は、ゆっくりと膝を曲げてその視線を顔ごと落とし、背後から紗恵の顔に近づくと、
「で?実際どうなの?紗恵教授」
「ふふ~ん、詩織准教授君それはだね~」
『試合外で思考を読もうとすんな!!』