第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
私や紗恵と、比較にならない程か細く柔らかいその声は。
紗恵に向けた視線に映り込んだ、新たな人影と共にやって来た。
「んじゃどんな感じなの??」
その声に釣られるがまま。
それまでずーっと紗恵に合わせていたピントは、自然とその“新たな人影”に合わさっていく。
紗恵の後ろ…つまりは私の横からやって来たその人物は、スルーして放置したままの史奈よりも長身で。
紗恵を挟んで私を見下ろしてきた。
『は?』
「“ワクワクしちゃってる感じ”じゃないなら、
じゃあ“どんな感じ”なんだろうな~ってさ!」
そう言って、詩織は私に向かって無邪気に笑ってみせた。
「そーだそーだ、“違う”ってなら
本当のことを教えてもらわねーとな~?」
どうやら紗恵は、詩織のこの参戦を“好機”と捉えたようだ。
言葉からもそのことは十分過ぎるほど伝わってくるが、私に向けたこの勝ち誇ったような顔が証拠だ。
それに実際、紗恵にとって好機なのは間違いないんだろう。
なぜなら詩織の問いは、私の答えによっては紗恵の意見を後ろ立てるものになる可能性が高いからだ。
だから私は…
『別に…“昂った”って言っただけで。
そんな深い意味はねぇーよ…』