第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
詩織が目線を下げたことで、それまでの2人の身長差が噓のように消え。
私は紗恵と詩織の両方から、同じ目線上で見つめられることとなった。
それが影響しているのかは分からないが、先ほどよりも圧力のようなものを感じる。
「で?実際どうなの?紗恵教授」
詩織に後ろから問われた紗恵は、依然私を見つめたままニヤニヤしている。
しかしその様子は、先ほどとは違う雰囲気を纏っていることを、私は感じ取った。
あたかも何かを見透かそうとしているその視線…
「見覚えがある」という言い方は正しくない。
私はその正体を知っている。
「ふふ~ん、詩織准教授君それはだね~」
本来、試合時に大きな武器になるはずの、紗恵の“エース思考完コピ”。
それを、よりによってこいつらは…
『試合外で思考を読もうとすんな!!』
プライベートでも使おうとするから、厄介なんだ。
・・・・・・
それらしい目をして、私を見定めている最中であろう紗恵は、私の制止を聞くこともなく、
「はい、出ました~!!」
と、なぜか誇らしげに言ってるんだ。
高々と上げたその両腕が、紗恵の自信だけではなく、その溌剌とした性格までをも表しているようだった。
お陰で私は、それまで離されることのなかった紗恵の腕から解放されたが、その代償とでも言えるのだろうか。
それまで、私に真っ直ぐに向けていた詩織の視線が。
紗恵の二の腕によって遮断された。