第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
別に私だって、大きい声を出したいわけじゃないんだ。
慣れてないし、体力すり減るし、喉は壊れるし。
でも、馬鹿ども相手に私の声は、自然と通常より張ってしまう。
そうでもしないと紗恵…改め私を囲むこいつらは、加減を知らずに私の心労の元となる。
だから私は強めに止めるし、治療費請求するくらいなら、いっその事紗恵(こいつ)の口にチャックを付けるだろう。
仮にそれが可能で、そのためなら寧ろこっちから金を出すと思う。
逆に言えば、出来ないからこそ今こうなっている。
例え技術はあったとて、中学生の私に“金にものを言わせる”なんてことが出来るはずもなく、だったら力技で止める他ない。
だから私は体を張ってるんだ。
「もぉ~意地はってないで
素直に認めたらいいのに~」
『だからそんなんじゃねぇーって!』
ほんと、我ながらくだらないとは思うんだけれど。
ここで折れたら負けた気がするし、正直ここまで言い合った末に紗恵に軍配を上げさせるのはそれこそ癪だ。
だから、これでもかと至近距離で言い合う。
その時の私たちの会話からは、きっといろんなことが筒抜けになっていただろう。
それは例えば、私たちのことを知らない人間にも、私と紗恵の性格の相違が、その口調から容易く理解できてしまうくらいには。
しかしそれは、あることをきっかけに終了する羽目になる。
それ自体は私としては願ってもないことなんだけれど、それが外からの介入なのであれば。
“勝つか負けるか”も、それに左右されることになる。
互いが主張を譲らない中。
それは、あたかも私と紗恵を仲裁するかのように、私たちの会話に参戦したんだ。
「んじゃどんな感じなの??」
『は?』