第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
『あぁ、ありがとう。キャプテン』
・
「副キャプテンだ。いい加減間違えんな」
愛華に倣って左手を差し出す片手間に、私が言った言葉に対して、愛華は素早く言い返して来た。
「自分はキャプテンではない」と…
この話、“正解かどうか”で言えば愛華の方が正解だ。
散々、“キャプテン”“キャプテン”と、その役割を乱発してきたが。
正しくは本人が言う通り、愛華はキャプテンではない。
しかし、単に“まだ”ってだけだ。
この全国が終わって、先輩たちが引退したら。
愛華はうちの、正式な主将(キャプテン)になることが決まっている。
別に間違ったことを吹聴しているわけではない。
だから私は、愛華の反論もそこそこに、差し出されたその手を自分の左手で包み込んだ。
試合途中、お預けを食らったその掌の温かさに、私は懐かしさにも似た拠り所を感じた。
そして、お互いの気持ちを確かめ合うように。
今この瞬間、昂る一体感を共有し合うように。
互いがライバルであることを忘れ、目を合わせて笑った。
考えてみれば、昔と比べてよく笑うようになった。
私も、愛華も。
史奈と紗恵と詩織と同じように。
そうやって、ここまで一緒に歩いてきたんだ。
それを伝えたくて。
今ある全ての感情を左手に乗せて。
思いを込めて、左手をギュッっと握る。
そしたら、
「いっでぇえぇえぇ〜〜〜!!!!」