第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
でっかい赤ん坊1人と、役立たず1人相手にしてると。
また別の人影が、何やら荒ぶった様子で近づいてきた。
「クッソー!天にいいとこ
全部持ってかれた〜!!」
『お前はやっぱどっかズレてんだよ!!
この状況見て先ずそれ言うって何?!』
詩織に腕を回された狭い視界の中で、悔しそうに顔を顰める史奈が見えた。
そいつが荒っぽく髪をわしゃわしゃと掻き乱すと、その勢いで透明な汗が周囲に飛び散る。
「史奈!汗!汗!!」と、紗恵が隣で拒絶するのも構わず、水から上がった動物のように、身体から水分を吹き飛ばしていた。
誰とは言わないけれど、“誰かさん”のせいで、今にも潰れそうになっているチームメイトを目の前にして。
どうして真っ先に得点の話になるのかが意味不明。
そのお陰で“史奈の馬鹿は何があっても常時”ってことの証明にはなったな。
“いつも通り元気”ってことで、楽観的に考えないとこっちの気が持たない。
当の本人は、そんな気など知りもしないという様子で、
「次の試合こそ!
ぜってーあたしの方が点取ってやる!!」
『身内で競って何が楽しいんだよお前は?!!
んなことして次の試合、間違っても
オウンゴールなんかすんじゃねぇーぞ!!』
「な?!んなヘマするかよ!!」
『そうだよ“ヘマ”だよ!
その“ヘマ”の唯一の経験者が威張んな!!』
お互い、勝ち取った勝利に興奮しているからか。
はたまた、本音が漏れているだけなのか。
要因も、この話の行き着く先も不明なまま。
自然な流れで口論が始まってしまったが、たった一つ、この事実を忘れてもらっては困る。
馬鹿どもの相手をしている、その間…
私は、ずーっと詩織を全身で支えているってことを。
そして、これに関しては、ほんと昔から最難関の問いなのだけれど…
試合終わったばっかだってのに、なんでこいつらこんなに元気なの?