第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
天。
私の名を呼ぶ声。
それに応えるように振り返ると…
同じユニホームを纏った4つの人影が、こちらに向かって走って来る。
そのうちの1人が、双方の噴き出る汗を気にする素振りもなく、私を全力で抱きしめてきた。
体が一瞬宙に浮くほどの勢いだったが、それも束の間…
逆にそいつの全体重がのしかかってきた。
『ゔげ…!』
「天!やったね!!」
その勢いに、思わず身体から変な声が絞り出た。
一方、私を呼ぶその懐っこい声と顔。
それとは裏腹に、今にも私を覆い隠しそうな大きな体…
こちらのことなどお構いなしに、全体重を任せてくるのだが…
いつもいつも、こんな風に受け止めている私の身にもなって欲しい。
決して楽じゃあない。
『ったく、試合終わったばっかだってのに…
随分と元気みたいじゃねぇーか…』
「へへへ~!」
そこそこの重量。
だが、まぁいい…
やっぱ、いい顔してるじゃねぇーか。
その笑顔を見ていると、何も言えなくなってしまう。
意識してんだか、はたまた素なんだか。
唐突に、コート上でチームメイトと戯れ合っていると。
また別の人影が、私に近づいて来た。
「最後の1分!マジキレてたよエース様!!」
『“キレてる”ってなんだよ。
んなことより助けろよ…』
さっきっから、私と詩織の掛け合いを見て小馬鹿にしたようにニヤニヤしているその人影…
紗恵に、一応ヘルプ要請を出した。
でっかい赤ん坊のお守りは、試合後にはきびしい。
…が、期待はしない。
期待しないのがいつも通り。
「えぇ~何で?親友同士が固~い絆で結ばれてる
真っ最中だってのに!!それを止めるなんて…
そんなことウチには出来なーい!!」
『お前ほんっっっと調子いいな?!』
「誉め言葉として受け取るよん♪」
都合よく適当ぶっこいて、あろうことかこの状況を楽しみ爆笑する紗恵。
こっちの苦労も知らずに、毎度毎度お気楽なもんだ。