第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
『分かった分かった。んじゃ帰りに花屋で
なんでも好きなブーケ買ってやっから…!』
試合中にも関わらず、項垂れている愛華に向かって、私がそう声をかけると…
「…本気(マジ)?」
案の定、少しばかり目に光を宿した期待の目を向けて、私を見上げる愛華の顔が見えた。
その反応に、これ幸いと思った私は、
『マジマジ、東京の花屋だぞ?
きっといいものばっかだぞ??』
そう続けて、愛華の期待をさらに上げようとした。
すると…
「まずイエローとピンクのトルコキキョウを
惜しみなく使って…」
『うんうんはいはい』
愛華はまだ顔を上げようとしない。
しかし口調は、軽やかに花の名前を呟いている。
「かすみ草でボーリューム増した後、
アンモビウムを撒き散らしてもらって…」
『うんうん覚えきれねぇーけど
とりあえず分かったから』
正直、花のことはよく分からない。
逆に、どうして愛華(コイツ)はここまで覚えられるのだろうと不思議になるくらいだ。
でも、まぁいい。
ここまでペラペラ喋れるようになれば、愛華の機嫌も戻ってきたということで間違いないのだろう。
…しかし、物事には必ず限度ってものがあるんだ。
だから…
・・・・・
「以上をブーケではなくバスケットで」
そう言われた時は、流石に反論せずにはいられなかった。